北京で体験した宴席風景の大きな変化

日本経営管理教育協会が見る中国 第315回--大森啓司(日本経営管理教育協会会員)
● 北京出張時の私的なイベント
前回のコラムでご報告したように、筆者は、2014年5月13日から3日間、日本経営管理教育協会の代表として北京を訪問した。中国側の事務所訪問も初めて実現でき、2014年度の共同研究のテーマは「高齢者問題」で、わずか半日ではあったが、日本の状況について意見交換できたことは非常に有意義であった。また、毎日違ったメンバーでの夜の宴席を設けていただき、これまた非常に嬉しかった。今回はこの北京で何度か受けた宴席での出来事について論じてみたい。
● 組織よりも個人のつきあいを大切にする中国人
中国では日本よりも個人的な人間関係に重きをおく社会と聞いている。例えば、中国人が日本に来る際に「俺にはこんなすばらしい友人が日本にいる!」と言えることが、彼らにとってのプライド・見栄であると同時に大切な価値観と認識していた。
事実、筆者も中国で知り合った方が日本にこられた際には、その方の面子を守るために、「これでもか!」くらいの接待をしたことが何度かある。中国に行った際には逆で、客人(今回は筆者)を酒席に招いて一緒に食事をする場こそ、新しい人間関係を築く場であると認識している。
今回の出張でも初めての方が挨拶(同席)してくださり、私の中国語の発音を直してくださったことを昨日のように覚えている。そんな宴席の場で気になったことがあった。
● 宴会に見られなくなった「見栄」
私が中国での宴席では酒を飲みほしたり、料理を食べつくすということは「失礼」「接待不足」「面子なし」になると理解をしていた。事実、お酒は常に半分を残し、隣の方のコップを持って注ぐよう常に意識していた。また、食事もめずらしい料理が次々と現れ、その種類と量の多さにはただ驚くばかりであった。
しかし今回の出張では、料理の量も思ったほど多くなく、宴が終了近くになると、「服务员!服务员!」と叫び、なんと残っている食事を全てタッパウエアにいれて持ち帰るという光景に出くわした。
過去、中国での宴会に参加するたび、料理がたくさん残る様子を見て「もったいないな~」「環境にもよくないな~」「でもこれが中国文化だから」と心の中では思っていたが、今は大分変わったと感じた。
実はこれは夜の宴席だけではなく、昼の食事も全く同じであった。北京中央民族大学の恩師と食事をする機会を得た。恩師は日本語を全く話さないので、私の片言の中国語につきあっていただき、楽しいひと時を過ごす事ができた。この際にも烤肉はもちろん、なんと蔬菜までも持って帰られ、「これは今日の晩御飯。」と言われ、少し切ない想いをした。
● 再考「三顧の礼」
私の好きな言葉に「三顧の礼」がある。三国時代に劉備が諸葛亮を軍師として招く際に3度訪問したいう話である。中国人が日本人と似ている点として遠慮深さがあると思っている。私は欧米企業で育ったのでどちらかというと遠慮はせず、合理性を求める人間である。そういう意味で中国人も宴席の食事を残す行為が本心ではなかったのではないか?環境を大切にしなければ時代だからこそ、この習慣がこれからも根づいてほしいと思っているのは筆者だけではないと信じたい。(執筆者:大森啓司・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)
前回のコラムでご報告したように、筆者は、2014年5月13日から3日間、日本経営管理教育協会の代表として北京を訪問した。中国側の事務所訪問も初めて実現でき、2014年度の共同研究のテーマは「高齢者問題」であったが、わずか半日ではあったが、日本の状況について意見交換できたことは非常に有意義であった。
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2014-08-01 15:45